司法アクセス障害の解消という課題は、市民の中の弁護士を目指す司法制度改革において、もっとも重要なトピックであった。ひまわり公設をはじめとする過疎地対策や法テラスの推進、各都市における都市型公設事務所の設置は、こうした課題へのひとつの回答であった。

 ところが、こうした司法アクセス障害解消の課題の中で未だ取り残された分野が存在する。外国人の司法アクセスの問題である。我が国における外国人人口は増加の一途をたどっているが、一般的な法律問題であっても、言語上の障害や、文化の相違、差別の存在などもあって、権利が十分に保障されにくい。また在留資格や難民認定等の外国人特有の問題も存在する。その意味で外国人に対するリーガルサービスの必要性は極めて高い。日弁連や法テラスによって、外国人・難民法律援助制度や民事法律扶助相談通訳サービスなどの制度基盤は整いつつあるものの、現実にこれらの法的サービスを担う、外国人のためのローヤリングを扱う弁護士は少数に留まっている。そのため、多くの紛争に巻き込まれた外国人はなおリーガルサービスを得ることができないままにいるのが現状である。この問題が解決されないままで、司法制度改革が目指す「誰もが等しく」法による救済を受ける社会の実現はない。

 また、外国人事件に取り組む弁護士が極めて限定されているという状況は、外国人に対するリーガルサービスの供給量の問題だけでなく、質的な課題も生じさせてきた。すなわち、外国人に関するローヤリングについての情報や知識を共有する仕組みやネットワークがなく、この問題にかかわる弁護士の裾野を広げたり、切磋琢磨し専門性を高めていくことが困難であった。ともに市民社会を形成する重要な一員である外国人も、等しくリーガルサービスを受けられることを保障する基盤を作ることは、多文化が共生する社会を実現するために不可欠な条件である。また、国内における法的救済だけでなく、国際的な対応を求められている難民問題や人身売買等の人権課題についても、抜本的な解決のためには、言語や国籍を超えた法律家の連帯が求められている。

 そこで、私たちは、ここに、外国人に対するリーガルサービスを量的・質的に向上させ、また国際的な連携・協力を実現するために、知識や情報の共有、人的基盤の拡充等を目的として、外国人のためのローヤリングを扱う弁護士達のネットワークを構築することを呼びかけることとする。私たちは、このネットワークが一つの発端となり、数多くの豊かな実践が行われることを願って手を取り合い、真に世界に開かれた市民社会の実現を夢見て集う。

 2009年5月13日